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社会福祉法人の指導監査でよくある不備とその対策【ガバナンス編】

――理事長・幹部の皆様へ

前回は、指導監査で頻出する指摘事項全体の傾向と、その背景にある構造的な課題についてお話ししました。第2回となる今回は、「ガバナンス関係」に絞り、評議員会・理事会の運営という、法人統治の根幹に関わる部分を掘り下げます。

目次

1. ガバナンス関係で頻出する指摘事項

厚生労働省の資料や、それに基づく各所轄庁の指導監査基準を見ると、評議員会・理事会に関する指摘は、所轄庁の資料でも頻出事項として取り上げられる項目です。具体的には次のような項目です。

評議員会に関する事項

  • 評議員会の招集通知が、理事会の決議より前に発出されている(社会福祉法第45条の9第10項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第181条・第182条)
  • 招集通知が、法定の期間(原則1週間前まで)を満たさずに発出されている
  • 決議に特別の利害関係を有する評議員がいないかを、法人として確認した記録がない
  • 前年度から連続して評議員会を欠席している評議員がいる

理事会に関する事項

  • 理事長・業務執行理事による職務執行状況の報告が、法定の頻度(原則3か月に1回以上、定款で定めた場合は毎会計年度4か月を超える間隔で2回以上とすることも可)を満たしていない(社会福祉法第45条の16第3項)
  • 理事会の議事録に、決議事項に対する各理事の賛否や、特別の利害関係を有する理事の有無の確認結果が記載されていない
  • 監事の選任に関する評議員会の議案について、監事の過半数の同意を得たことを示す記録がない

その他

  • 理事長の変更や事務所所在地の変更など、登記事項に変更があった際に、登記が期限内に行われていない(社会福祉法第29条、組合等登記令第3条)

いずれも、一つひとつは形式的な手続の問題に見えるかもしれません。しかし、これらが繰り返し全国で指摘されているという事実は、個々の法人の不注意という以上に、ガバナンスの仕組みそのものに共通の弱点があることを示唆しています。

2. なぜガバナンス関係の指摘が集中するのか

評議員会・理事会という機関は、本来、法人の意思決定に「順序」と「記録」という二つの規律を与えるためのものです。指摘事項を仕分けると、この二つのどちらかが崩れているケースが多いと考えられます。

① 意思決定の順序が守られていない
評議員会の招集は、本来「理事会が日時・場所・議題を決議する」→「その決議に基づいて招集通知を発出する」という順番で行われる必要があります。ところが実務では、日程調整の都合上、招集通知の準備が先に進み、理事会の決議が後追いになる、あるいは形式的なものになるということが起こりがちです。順序が守られているかどうかは、議事録の日付を突き合わせることで確認できる、という性質のものです。

② 「確認したこと」が記録として残っていない
特別の利害関係を有する評議員・理事がいないかの確認や、監事選任議案への監事の同意は、法律上、法人が確認すべき事項として明確に定められています。しかし、実際には確認自体は行われていても、それを議事録や同意書といった形で残していないために、指導監査では「確認していない」という扱いになってしまいます。行為そのものより、記録の有無が問われるという点で、他の指摘事項とは性質が異なると言えそうです。

③ 「継続的な義務」が見落とされやすい
定款変更や役員選任のような単発の手続と違い、理事長等の職務執行状況報告は、年間を通じて一定の頻度で行い続ける必要がある義務です。単発の手続は年に一度の確認で足りますが、継続的な義務は、日々の運営の中で「今年、何回報告したか」を意識し続けなければ、気づかないうちに未達になっているということが起こります。

3. 経営陣に求められる視点

ガバナンス関係の指摘の多くは、法令の解釈が難しいために起きるものではありません。むしろ、招集の順序や記録の作成といった、日常の運営フローの中に組み込まれていれば防げる性質のものです。

そのため、理事長・事務長に求められるのは、個々の手続を都度確認することよりも、評議員会・理事会の運営そのものを一つの定型業務として設計し直すことです。

  • 招集通知の発出は、理事会決議の後であることを起点にした準備スケジュールを組む
  • 特別利害関係の確認を、議案ごとに記録する運用を定める
  • 理事長等の報告実績を、年間を通じて管理する仕組みを持つ

これらは一度型を作ってしまえば、その後は担当者が変わっても維持できるものです。指導監査における指摘は、こうした型がまだ整っていない部分を映し出すものと捉えることができます。

今日、確認していただきたいこと

理屈はここまでとして、実際に何から手をつけるべきか、一つだけご提案します。

直近の評議員会の招集通知と、それを決議した理事会の議事録を、日付だけ突き合わせてみてください。

理事会の決議日より、招集通知の発出日が前になっていないか。それだけです。逆にここでずれが見つかった場合は、招集準備のスケジュール自体を見直すきっかけにしていただければと思います。


次回【会計管理編】では、経理規程と実務の乖離、拠点区分間取引の処理、固定資産管理といった、会計面での頻出指摘事項を取り上げます。

当事務所では、こうした指導監査に対応し得るガバナンス体制の構築についても、法人の実情に応じた支援を行っております。

出典:厚生労働省「令和8年3月 社会・援護局関係主管課長会議資料(資料6:福祉基盤課)」参考資料2-1〜2-3、厚生労働省「社会福祉法人指導監査ガイドライン」(東京都福祉局サイトに掲載)、東京都「令和8年度社会福祉法人指導監査実施方針」/根拠法令:社会福祉法、社会福祉法施行規則、組合等登記令、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

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